私たちの酒造り

奥羽山脈からの雪解け水で潤う、宮城県加美町は豊かな肥沃の平野に位置します。日本有数の米どころであり昔から酒づくりが盛んなこの土地に、伊達藩随一の呉服商だった初代・田中林兵衛が寛政元年(1789年)に創業したのが田中酒造店です。

田中酒造店がある加美町中新田地区は、知る人ぞ知る銘醸地。そもそも宮城県は高品質な酒づくりを自認する地域で全国新酒鑑評会では金賞を受賞する蔵も多く、中新田地区の酒蔵も金賞受賞酒を出しているハイレベルな吟醸地であります。

当蔵を代表する銘酒、大吟醸「金紋真鶴」は2009、2010、2013年度の全国新酒鑑評会で金賞を受賞しました。創業以来、昔ながらの製法にこだわり230年近くたった今でも丁寧な酒づくりを伝承している賜物であると自負しています。このような通好みの酒づくりは全国の酒愛好家から熱烈な支持を頂戴しております。

地元宮城県産の米、奥羽山系の伏流水、そして蔵人たちも皆、東北の人たちです。地元の恵みを知りつくした蔵人たちが、毎年気候の変化を感じ取り最高の地酒を醸します。蔵人たちの最高責任者のことを杜氏と呼びますが、田中酒造店の盛川杜氏は、「おいしい」の一言を聞く為に日々精進を怠りません。

田中酒造店では様々な新しい取り組みに挑戦しており、2009年その努力が実を結びました。それは67年ぶりに復活させた「生酛(きもと)づくり」の純米酒です。長年醸造に携わってきた当時の蔵人達も作ったことのない大きな挑戦でありました。江戸時代の文献を紐解き、試行錯誤の上ようやく完成した生酛づくりの純米酒は、ほどよい酸味としっかりした味わいで、口に含むと旨みが広がり、手をかけた数だけ想いと共に、その味わいに顕われてくる厚みのある仕上がりになりました。

生酛づくりの復活から数年余、現在宮城県内で生酛づくりをするのは田中酒造店のみです。企業価値を高める取り組みは他にも行われており、純米吟醸「天音」は宮城県の東鳴子温泉の旅館とコラボした商品。オリジナルで作曲された「お酒の子守唄」を4ヶ月聞かせ熟成させた「音楽酒」です。まろやかな口あたりと地元音楽家のメロディーに想いを馳せる芸術的な味わいに共感するお客さまも増えてきました。

また、宮城県産米の「まなむすめ」と県開発の酵母「愛実(まなみ)」を使用した「まな姫」はワインに近いアルコール酒でスペインやポルトガルにも輸出され当地では人気を博しております。

昨今、日本酒を見直す気運が高まっていますが、高品質な酒作りをするのには手間がかかり多くの酒蔵が諦めているのが現実です。その中でも田中酒造店は伝統的な酒づくりを続け、また更なる取り組みを行うことで企業価値を高め多くの人たちに日本酒文化を届けることを誇りとしていきたいと願っております。